フランク・ロイド・ライトの旧帝国ホテルを訪ねて
三田モデルハウススタッフ 風深 智恵
私は、弊社の「オーガニックハウス」シリーズの一つ、三田モデルハウスのスタッフとしてお客様をご案内しております。
オーガニックハウスは、建築家フランク・ロイド・ライトが提唱した有機的建築の思想を継承した住宅です。そのルーツとも言うべき、彼が設計した旧帝国ホテルの中央玄関部分が愛知県の「博物館 明治村」に移築保存されています。先日見学して参りましたので、ご紹介したいと思います。
・帝国ホテル中央玄関の見学
・・大谷石
・・建物内部
・・ステンドグラス
・・光の籠柱
・・スダレ煉瓦
明治村とは
100万㎡の敷地に明治時代を中心とする60以上の歴史的建造物を移築し、保存・展示する野外博物館です。詳しい情報はページの最後でご紹介しています。
帝国ホテル中央玄関の見学
事前にある程度下調べはしていましたが、実際行ってみると、まずその存在感とスケールの大きさに圧倒されました。建物前面にあった池も再現されていて宮殿のような趣があります。建物のモチーフは平等院鳳凰堂とも言われていて、ライトの日本への造詣の深さを感じます。
帝国ホテル中央玄関(明治村)
大谷石
ライトは加工しやすい大谷石を多用していましたが、デメリットとしては柔らかいので劣化が早く屋外に使用すると風雨によって浸食が進み表面が剝がれてくることもあるようです。玄関横には当時のオリジナル部材が飾られていますが浸食の形跡があり年月の経過を感じます。
建物内部
玄関を入ると階段とロビーの広さが印象的です。メインロビーは3階まで吹き抜けなので、より広々とした空間になっています。
続いて目に飛び込んでくるのが細かい細工や彫刻の数々です。凄いなと思うと同時に膨大な時間と手間がかかっただろうと当時の作業の大変さが忍ばれます。
ステンドグラス
金箔を挟んだステンドグラスが目を引きます。
光の籠柱
中央玄関ホールは3層吹き抜けになっていますが、そこに立っている光の籠柱は日本の行燈をイメージして造られたと言われています。
そう言われると何故かほっとするような懐かしい感じがするのは私が日本人だからでしょうか。
それにしても細かい彫刻と光が織りなす独特の雰囲気は唯一無二のものです。この建物を象徴する美しい造作だと思いました。
暫し足を止めて、見上げてしまうスポットです。
スダレ煉瓦
当時の「スダレ煉瓦」(後のスクラッチタイル)です。その色を出すために多くの苦労があったとのこと。
職人さんが手作業で溝をつけられ大変な作業だったと思いますが、手作業のぬくもりのようなものを感じます。
これだけ贅沢な造作をしているものですから当然、費用も莫大にかかっていたことでしょう。予算オーバー、後期の遅れ、度々の設計変更などでライトは解任されアメリカへの帰国を余儀なくされたそうです。その後は弟子の遠藤新が引き継いで竣工の運びとなりました。
困難があっても妥協せずその理念が凝縮されていて、ここから現在に繋がっていると思うと歴史の重みを感じます。そして、ライト建築のエッセンスを取り入れ現代に合ったデザインを施したのが三田モデルハウスだと納得しました。
また、ライトは建物だけでなく、その空間に合わせて家具や照明、食器などのインテリアもデザインしていました。モデルハウスで何気なく見ていたものにも、ライトのポリシーを感じることができ、いろんな発見がありました。
特に照明器具は現代にとてもマッチしており、あらゆるシーンに活かされています。
三田モデルハウス
それでは、ここからは三田モデルハウスをご紹介します。
玄関ホール
こちらは玄関ホールです。壁には、当時の「スダレ煉瓦」の風合いを受け継いだスクラッチタイルを使用しています。外壁と同じタイルを使用し、内外のつながりを感じさせます。
飾り棚の両脇にはライトのデザインした照明(復刻版)が迎えてくれます。
リビング暖炉
リビングの暖炉にもスクラッチタイルを使用しています。
照明
サブリビングにあるスタンド照明 タリアセン2です。
テレビ番組のセットなどにもしばしば登場していて人気の高さが伺えます。計算された光と影の効果は、空間に独特な雰囲気と深みを与えています。
寝室やテーブルの上にもタリアセン1のフロア照明とテーブル照明を置いています。
こちらは造作の照明です。
幾何学的なデザインでありながらスッキリと飽きの来ないものになっています。
幾何学模様
フランク・ロイド・ライトといえば幾何学模様が特徴的ですが、旧帝国ホテルでも多彩な幾何学模様の装飾が施されており、その美しさに圧倒されます。そして、このモデルハウスでも、階段の滑り止めにさりげなく幾何学模様が取り入れられています。
旧帝国ホテルが建設された当時は手作業が多く、職人さんの熟練の技がその建築を支えていたと思いますが、当モデルハウスも職人の技が生きています。職人の腕の見せ所というところでしょうか。
旧帝国ホテルの歴史
1923年(大正12年)、旧帝国ホテルは東京都千代田区日比谷公園の向いに建設されました。
総面積34,000㎡余、中心軸に玄関、2層吹き抜けの大食堂、高層の劇場などの公共部分が連ねられ、左右には全長150m・3階建ての客室棟が配置されていたようです。その後、客室の少なさや老朽化のため、1967年解体されその後、中央玄関部分が明治村に移築されました。といってもそのままを移築するのは困難なため様式保存という形をとられました。展示公開されるまで18年もの歳月が費やされたそうです。解体されるまでは、日本を代表するホテルとしてその役割を担い、様々な要人を招き迎えるため活用されました。その荘厳で格調高い空間は来場者に驚きと豊かな心地良さをもたらしたことでしょう。
まとめ
今回、旧帝国ホテルを訪れて思ったのは、良いものは年月を経ても受け継がれていくのだということです。確かに良い建物を作るためには良い材料、丁寧な作業、多くの時間などいろんなコストがかかります。しかし、大事に住み続けて心豊かな生活を送るために費やすお金は決して無駄ではないと思います。
旧帝国ホテルをご覧になる際には、ぜひ当モデルハウスと共通するデザインのエッセンスにも注目してみてください。
博物館 明治村
◆帝国ホテル中央玄関の詳細や見学の際の注意事項については、明治村の公式ホームページをご覧ください。
【博物館 明治村】
100万㎡の敷地に明治時代を中心とする60以上の歴史的建造物を移築し、保存・展示する野外博物館。
電話:0568-67-0314
所在地:愛知県犬山市内山1番地
開村時間:9:30~17:00(季節やイベント開催等により変動あり)、最終入村は閉村30分前
休館日:不定休
入村料:大人2500円 高校生(要学生証)1,500円、小学生700円
■オーガニックハウス 三田モデルハウス の詳細情報、見学予約はこちらをご覧ください。
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